2014年8月8日金曜日

芸の世界に正解はありません

芸の世界に正解はありません。たとえば「正しい歌」,「正しいダンス」はありません。もちろん「型」はありますが,それはあなたが表現したいことを表現するためのツールにすぎません。型を再現できること自体は正解でもなんでもないのです。

型を利用しようがしまいが,あなたが表現したいことを表現できれば,それですでに正解なのです。あなたが表現したいことをうまく表現できなければ,どのようにすればうまく表現できるようになるかを自ら考え,工夫しようと努力することが学習です。

あなた自身が表現したことと,それを他人がどのように評価するかは,まったくの別物です。評価されたから正解,評価されないから不正解ではないのです。すべてはあなた自身が本当に納得できるかどうかなのです。

同様に,「正しい論文」もありえません。論文とは,データに基づいて,あなた自身の問題意識や考えを広く世間に伝えようとするためのものです。「こういう論文を書いたから正解」というものはないのです。もちろん論文にも型はありますが,歌やダンスと同様,型はツールにすぎません。

というわけで,「この論文で大丈夫ですか?」,「この論文のどこを直したらいいですか?」といった質問は,少なくとも私にとって,明らかに間違っています。あなたが大丈夫と信じていればそれで大丈夫ですし,あなたが直す必要があると思うところが直すべきところです。 私にできるのは,あなた自身の問題意識にうまく取り組むための,またあなた自身の考えをうまく表現するためのお手伝いだけです。あなたの論文の責任は,あなた自身がとってください。教官であれ権威者であれ,決して他人にとらせてはいけません。それは誰にも譲ってはならないものです。

歌であれ,ダンスであれ,論文であれもちろんカウンセリングであれ,芸の世界には先生がマルバツをつけるような「学校の価値」は通用しないのです。