2014年6月3日火曜日

大学院は研究するところです

教育方針に「『誰かの心の支えになる』仕事ができるのは臨床心理士だけではない」と書いたように,僕は「誰かの心の支えになる」ためには大学院進学が必須だとは思っていません。もし必須だと考えるならコミュニティ・アプローチなんてやってないですよね。コミュニティ・アプローチを通して,理系の学生さんが不登校や発達障害の子どもさんと上手に遊ぶ場面を,また IT 関係の仕事をされている方が人の悩みに丁寧に耳を傾ける場面を,僕は地域で数多く目にしてきました。

臨床の最先端は臨床現場であり,大学院ではありません。確かに研究は臨床を豊かにし,臨床は研究を豊かにすると信じていますが,以上のような理由から修士レベルの研究が臨床実践のための必須条件であるとは僕は考えていません。このように考えると,学部卒でも取得できるとする公認心理師の流れは(医師の指示問題は気になるものの)基本的には正しいのではないでしょうか。

大学院は大学院生が自分のアイデアのもと,研究をするところです。大学院では「いかに知識を与えられたか」よりも「いかに自分の頭で一生懸命考え,行動したか」,「自分の研究をいかに自分自身の技術と言葉で語れたか」が勝負どころとなります。臨床についても同様で,大学院は「カリキュラムで強制エンカウントする実習をこなして経験値をただ与えてもらうところ」ではありません。

求めよ,さらば与えられん。このように,シンプルに考えればよいのではないでしょうか。