2013年12月2日月曜日

そこになくて、そこにあるもの


この記事は LibreOffice Advent Calendar 2013 の2日目の記事です。naruoga さんバトンを渡していただきました。このような楽しい企画を用意してくださって、ありがとうございます。

本題に入る前に、私の本業について簡単にご紹介しておこうと思います。私はある地方大学の教員で、専門領域は臨床心理学です。一見すると関係なさそうに思えるかもしれませんが、Ubuntu や LibreOffice など、普段から数々の FLOSS (Free/Libre/Open Source Software) のお世話になっています。というか、FLOSS がないとさっぱり仕事になりません。

特に LibreOffice は研究をはじめ、私が業務でもっとも使用するソフトウェアの一つです。私が普段仕事でどのように LibreOffice を使っているかについては、今週末(7(土))の記事に書きますので、もしご興味がありましたらご覧ください。

LibreOffice は私にとって重要なソフトウェアの一つですが、大した貢献ができているわけではありません。少しだけですが、UI (User Interface) の翻訳案の提案をさせていただいたり、Ubuntu Magazine Japan 2013 Summer に LibreOffice に関する記事を書かせていただいたりしています。

UI の翻訳にあたって、以前こんなことがありました。Impress のメニューの [Minimize Presentation] の翻訳の変更をあわしろいくやさんが提案され、それを受けて私は「[プレゼンテーションの軽量化]はどうでしょうか」とアイデアを出しました。このアイデアは採用され、Impress のメニューには上の画像のように[プレゼンテーションの軽量化]という文字列が表示されています。本当に些細なことではありますが、このメニューを見るたびに、いつもちょっと誇らしい気持ちになります。

その他、Impress の UI の誤訳の修正を提案したり、Calc の関数に関する翻訳を検討したりしてきました。最近はほとんど何もできていないですが……。

では、臨床心理学を専門とし、IT業界については門外漢の私が、なぜ LibreOffice の翻訳に関わろうとするのでしょうか。「翻訳がヘンだと私自身使いづらい」とか、「学生さんにも使ってほしいからもっとよいものにしていきたい」とか、理由はいろいろとあるのですが、一番の理由は先にも書いた「誇らしさ」にあると思っています。

LibreOffice には数多くの人々が関わっています。私のような門外漢にも、関わるチャンスが開かれています。「誇らしさ」を感じる機会が誰にでもあるということです。これはとても素敵なことです。私のような些細な貢献をする者ですら感じるのですから、LibreOffice にはそんな「誇らしさ」がたくさん詰まっているのではないでしょうか。

ところで naruoga さんの発表スライド(OSC 福岡2013の20ページ目には「このコミュニティはステキだぜ!」という言葉が出てきます。私はこの一言が大好きです。「コミュニティをステキだ」と感じることは、技術論ではありません。それは人の思いです。しかし私にとっては、そんな人の思いがとても大切なものに感じられます。LibreOffice をはじめとする FLOSS において、「誇らしい」、「このコミュニティはステキだ」といった人の思いは、とても大切なものなのではないでしょうか。

LibreOffice は単なる「無料のオフィスソフト」では決してありません。ただバイナリをダウンロードしただけでは見えてきませんが、ひとたび関わればそれは、たくさんの人々の、たくさんの思いが詰まったソフトウェアなのです。もしこの記事を読んで、それを少しでも感じていただくことができれば、この記事はその役割を果たしたことになります。

あなたも私のように、「ちょっとした誇らしさ」を感じてみませんか? 翻訳をはじめ、入口はすぐそこにあります。

明日は eno_eno さんが記事を書かれる予定です。よろしくお願いします!